レジリエンス高め若々しく生きる

「糖の呪い」で皮膚はたるみ 骨はスカスカに

 病気をはねのけ、病気にならないように心がけることはとても大切です。しかし、いまの超高齢化社会において現実的にもっと重要なのは、たとえ病気になってもポキッと折れてしまうのではなく、バネのようにまた回復する力です。そんな抗病力、回復力を「レジリエンス」と呼びます。

 レジリエンスを身につけてタフな体をつくるには、まず、体の「糖化」を防止することが肝心です。加齢とともに体がさびる「酸化」は広く知られていますが、糖化はまだそれほど浸透していません。

 糖化とは、血糖が高い状態が長く続くことで体のタンパク質と糖がベタベタとくっついてしまい、タンパク質がボロボロと劣化し細胞が老化してしまう状態です。糖化が起こると、「AGE(終末糖化産物)」という病的な物質が体の中で増えていきます。このAGEが皮膚をたるませたり、骨をスカスカにしたり、体のあちこちを老化させます。

 さらに、AGEが蓄積されていくと、動脈硬化を引き起こし、脳梗塞や心筋梗塞などを招きます。認知症やがんの引き金になることもわかっています。

 みなさんの中には、「健診で血糖が高いと指摘されているけど、仕事で忙しいし、つらい症状があるわけではないから落ち着いたら治療しよう」なんて思っている人もいるでしょう。しかし、こうした考えは今すぐ改めることをおすすめします。

 糖化は長く放っておくと、やり直しがきかない状態を招いてしまいます。米国のDCCT-EDIC研究によると、高血糖の状態を6年半放置していると、その後に改心していくら血糖治療を強化しても、血管や腎臓の病気の発症リスクは減らせないことがわかっています。いったんできてしまったAGEはなかなか分解することができず、体内にどんどん蓄積していくためです。

 まさしく「糖の呪い」といってもいいでしょう。過去のツケによって、回復するためのレジリエンスは奪われてしまうのです。後回しにすること、先送りにすることはリスクになります。「糖の呪い」にかかる前に、今すぐ血糖を下げる努力を始めましょう。

江田証

江田証

1971年、栃木県生まれ。自治医科大学大学院医学研究科卒。日本消化器病学会奨励賞受賞。日本消化器内視鏡学会専門医。日本ヘリコバクター学会認定ピロリ菌感染認定医。ピロリ菌感染胃粘膜において、胃がん発生に重要な役割を果たしているCDX2遺伝子が発現していることを世界で初めて米国消化器病学会で発表した。著書多数。