レジリエンス高め若々しく生きる

激しい筋トレは動脈硬化を進める

 アメリカ国立老化研究所は、一流科学誌「セル」にアンチエイジング=レジリエンスを高めるために効果的な7つの方法を発表しています。「適度な運動」もそのうちのひとつです。

 ただ、ひとくちに「適度」といっても、「いったいどれくらいの運動をすればいいのかわからないよ」という人も多いでしょう。そこで、世界的に権威がある医学誌「ランセット」に掲載された、日本人に近い民族である台湾人の研究データを紹介しましょう。

 研究によると、「ちょっとつらいくらいの運動」=「汗ばむくらいの運動」を1日15分行うと、死亡率が14%も下がることがわかりました。さらに、そこから15分ずつ運動を延長していくと、死亡率がさらに4%ずつ下がっていきます。たった15分運動するだけで14%も死亡率が下がるのですから、ズボラを自認する人にも朗報といえるでしょう。

 ただ一方では、その運動を100分以上続行しても、それ以上、死亡率は下がらないことも判明しています。運動が大好きな人は別として、「費用対効果」を考えるなら、100分以上運動を続けるよりは明日に余力を残しておき、長く続ける方にエネルギーを振り分けたほうがいいということです。

 運動すると、活性酸素という細胞毒が生まれますが、体はこの毒を打ち消そうとして免疫力を高めます。これを「ホルミシス効果」と呼びます。運動とは、自ら少量の毒を作ることによって、健康効果をもたらすものなのです。しかし、長すぎたり激しすぎる運動は、かえって活性酸素を増やしてしまい、逆効果になってしまいます。

 近年、「激しすぎる筋トレは動脈硬化を進めてしまう」こともわかりました。数カ月の筋トレが14・3%も動脈スティフネス(動脈の硬さ)を増加させるのです。

 たとえば、重量挙げの選手は「ウンッ!」と息を止め、いきんでバーベルを持ち上げます。その際、血圧もグッと上がるのですが、軟らかい血管ではその上昇に耐えられません。血管がある程度硬くないともたないため、動脈硬化が進むのです。

 特殊な環境にあるアスリートと、われわれ一般人は状況が違いますが、筋トレによる動脈硬化を予防しておいた方がいいでしょう。筋トレをした後は、必ずウオーキングなどの有酸素運動で運動を終える工夫をすることが効果的だといわれています。

江田証

江田証

1971年、栃木県生まれ。自治医科大学大学院医学研究科卒。日本消化器病学会奨励賞受賞。日本消化器内視鏡学会専門医。日本ヘリコバクター学会認定ピロリ菌感染認定医。ピロリ菌感染胃粘膜において、胃がん発生に重要な役割を果たしているCDX2遺伝子が発現していることを世界で初めて米国消化器病学会で発表した。著書多数。