レジリエンス高め若々しく生きる

早く回復する人と長引く人がいるのはなぜか

「レジリエンス」という言葉があります。日本語では「抵抗力」や「復元力」などと訳され、心理学や精神医学の用語として使われてきました。

 レジリエンスが高い人はストレスや環境の変化に強く、逆境を乗り越えて立ち直るスピードも速い。逆にレジリエンスが低い人は、大きなダメージを受けてなかなか立ち直れません。

 これは、身体的な病気にも当てはまります。私は内科医として、いまも毎日200人近い患者さんを診ていますが、患者さんのなかには、年齢や生活環境がそれほど変わらないのに病気が早く回復する人と、長引く人がいるのです。

 同じタイミングで風邪をひいても、薬を飲まずに2、3日寝ているだけで治ってしまう人もいれば、なかなか快方に向かわず、しばらく寝込んでしまう人もいます。同じところを骨折しても、3カ月後に問題なく歩けるようになる人もいれば、そのまま寝たきりになってしまう人もいます。こうした違いが生じるのは、患者さんのレジリエンスの差といえるでしょう。

 最近の医学研究では、病気の根本には「老化」が存在すると考えられています。がん、心筋梗塞、脳梗塞、肺炎、認知症といったさまざまな病気の源には、老化のメカニズムが関わっているのです。

 さまざまな患者さんを診ていると、見た目が若い人は病気になりにくく、回復も早いことに気づきます。実際、見た目が若い人の体を調べてみると、血管、心臓、脳、胃腸といった臓器の状態が健全で、それを構成している細胞も若々しい。つまり、そういう人はレジリエンスが高いということで、レジリエンスを高めれば「老化=病気」を遠ざけることにつながるのです。

 レジリエンスは、個々が持っているもともとの能力だけで決まるものではありません。食事、運動、環境といった生活習慣によって高めることができます。

 次回から、最新の科学的根拠に基づくレジリエンスを高める方法を紹介していきます。

江田証

江田証

1971年、栃木県生まれ。自治医科大学大学院医学研究科卒。日本消化器病学会奨励賞受賞。日本消化器内視鏡学会専門医。日本ヘリコバクター学会認定ピロリ菌感染認定医。ピロリ菌感染胃粘膜において、胃がん発生に重要な役割を果たしているCDX2遺伝子が発現していることを世界で初めて米国消化器病学会で発表した。著書多数。