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【慢性疲労症候群】 静風荘病院・女性外来(埼玉県・新座市)

静風荘病院の天野恵子特別顧問と和温療法に使われる医療用サウナ
静風荘病院の天野恵子特別顧問と和温療法に使われる医療用サウナ(提供写真)

 突然、原因不明の激しい疲労感に襲われ、体の痛み、思考力の低下、睡眠障害などの多彩な症状が持続する「慢性疲労症候群(CFS)」。国内の推定患者は24万~38万人といわれ、約3割がほぼ寝たきり状態でいる。

 問題は、この難病をきちんと理解し、診療できる医師が国内ではごく少数だということ。しかも、確立された治療法もない。同外来を担当する天野惠子医師(同院特別顧問=写真)が言う。
「来院されるCFSの患者さんは、皆さん『やっと私のことを理解してくれる先生に出会えた』といいます。発症から20年以上たって『はじめて効果のある治療法に出合えた』という方もいます」

 CFSの治療は、漢方薬やビタミンCが使われることが多い。海外では、認知行動療法(心理療法のひとつ)や段階的運動療法なども行われているが、どれも効果は確実ではなく、悪化を抑える程度にとどまる。

 それで天野医師が5年前から取り入れたのが、患者が医療用の低温遠赤外線サウナ室に入り体の深部を温める「和温療法」だ。元鹿児島大学教授の鄭忠和医師が開発した治療法で、重症の心不全では先進医療になっており、動脈硬化で脚の血管が狭くなる閉塞性動脈硬化症、原因不明の体の痛みが起こる線維筋痛症やCFSなどの改善効果が報告されている。

「和温療法の導入を決めたのは、自分の更年期での経験があったから。体の痛みや疲労感が強く、CFSに似た症状でした。いろいろ試して唯一効果があったのがお風呂。不定愁訴の解消には体を温めるのが一番です」

 和温療法の手順は、室温40~60度の1人用サウナ室に15分入る。その後、安楽イスで肩まで布団でくるまり、頭もタオルで包んで30分保温して終了。これをCFSの場合、4週間入院して平日は1日2回、土曜は1回、計44回行って1クールになる。

 効果は症状の程度で個人差があるが、大半の患者に改善がみられ、軽症であれば治る場合もある。寝たきり状態の患者を3カ月かけて、屋外で歩ける状態にまで改善させた症例もあるという。

「CFS治療は和温療法が柱でも、決してそれだけではありません。リハビリをしたり、患者さんの話を理解して、元気づけて、寄り添うことが大切になる。これらすべてが認知行動療法そのものなのです」

 全国から集まる患者は、これまでドクターショッピングを繰り返してきた患者ばかり。いまでは患者団体が最も信頼を寄せている施設のひとつだ。

 天野医師による女性外来(週3日)は、基本的に女性患者のみを対象にしているが、CFSと線維筋痛症は男性患者も受け付けている。外来での初診は保険適用外の特別診療(費用3万円)となり、同院のホームページからプリントアウトした受診連絡票に記入し、FAXで申し込む完全予約制になっている。

データ
 1937年に貧困者の慈善病院として開設。81年に現名称に変更。
◆スタッフ数=5~8人(担当医・天野惠子医師)
◆外来初診患者数(2009年4月~)=約1100人
◆入院患者の和温治療実施数(2010年5月~)=延べ約300人(約7000回)