有名病院 この診療科のイチ押し治療

【腫瘍IVR】 国立がん研究センター 中央病院・IVRセンター(東京・築地)

国立がん研究センターの荒井保明センター長(C)日刊ゲンダイ

 IVR発祥の米国や欧州でも緩和IVRはあまり行われておらず、国内でもさまざまな緩和IVRをすべて実施している医療機関は10施設にも満たない。年間1500件以上にのぼる同センターの緩和IVR件数は、世界をリードする数字だ。

 では、具体的にどんなケースで行われるのか。

「たとえば、がん性腹膜炎などおなかに水がたまる難治性腹水に対するシャント術です。IVRで体内にチューブを埋め込み、心臓近くの静脈に腹水を戻すことで腹水がたまらなくなります。また、骨転移で骨が弱くなり、痛みで動けないような場合には、病巣部に樹脂を注入します。即効性があり、翌日には歩けるようになる患者さんもいます」

 がんに潰されて内側のスペースがなくなってしまった血管や消化管にステント(金属製の網状の筒)を挿入して再開通させる治療。鼻から胃や腸に挿入されているチューブを、首から挿入して鼻を楽にする治療など。がんに関わるさまざまな苦痛に対して、最小限の侵襲で多種多様に応用できるのがIVRの強みだ。

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