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【肝臓がん無痛ラジオ波焼灼】 杏雲堂病院・消火器肝臓内科(東京・神田駿河台)

杏雲堂病院消火器肝臓内科の佐藤新平部長
杏雲堂病院消火器肝臓内科の佐藤新平部長(提供写真)

「眠っている間に治療が終わる」「痛みや恐怖心がない」――。そんな患者の声が評判となり、遠方からの受診者も多い。肝臓がんに対する「無痛ラジオ波焼灼療法」。6年前に帝京大学ちば総合医療センターから赴任してきた佐藤新平科長(顔写真)が中心となって始めた。

「ラジオ波焼灼療法(以下、ラジオ波)は、手術より侵襲が少ないのがメリットですが、治療中に痛みを伴う。中には『二度と受けたくない』という人もいます。それをどうにかしたいと、7年前に麻酔専門医でもある同僚消化器医の協力を得て始めたのが『無痛ラジオ波』です」

 ラジオ波は、超音波でがんの位置を確認しながら、太さ1・5ミリの電極針を体の外から刺し、電極先端から発生する熱でがんを死滅させる治療法。「手術(肝切除)」「肝動脈カテーテル療法」と並び肝臓がん治療の3本柱のひとつとなっている。

 ただし、一般的にラジオ波は局所麻酔と鎮痛剤などを用いて、患者の意識がある(医師と会話できる)状態で行われる。呼吸をするたびに肝臓が動いてしまうため、電極針を刺す際に呼吸を止めてもらう必要があるからだ。

 がんが長径2センチでひとつなら2回くらい、長径3センチなら4回くらい刺し、1回につき5~10分焼灼する。痛いのは焼くときで、回数が多いほど患者さんは不安や恐怖をおぼえるという。これをがんの数に応じて30分から2時間かけて行っている。

「無痛ラジオ波では、麻酔は睡眠導入剤の静脈麻酔を用います。患者さんは眠ったままなので、痛みはまったく感じません。ただし、担当する医師には、動く肝臓のリズムに合わせて電極針を刺す正確さと、残りなくがんを焼灼する高い技術が求められます」

 患者の眠りの深さは、声をかければ目覚める程度で、その微妙な麻酔管理が重要。佐藤科長も当初は麻酔専門医と組んで実績を積んできたが、いまは3人いるラジオ波担当医だけで大半は対応できるという。

「他院で無痛ラジオ波があまり行われない理由は、麻酔医の協力が得られないからがほとんどです。それに、慣れていない麻酔薬を使用しづらい、いざというときの対応に自信がないなど。当科ほど全例“無痛”にこだわって治療している施設はないと思います」

 ラジオ波は、まったく安全というわけでもない。問題なく治療が終わっても、出血や感染などの合併症を起こす可能性がある。一般的には3~4%の確率で起こるとされているが、過去500例以上実施してきた同科では1%と低い。静脈麻酔で行うことによる合併症は1例もないという。

「ラジオ波の適応は、基本的にがんの大きさが3センチ以下、3個以下になります。5センチを超えたり、7個以上あるような場合でも、当科部長が担当する肝動脈カテーテル療法で対応できます」

 佐藤科長は、他4つの病院に出張して無痛ラジオ波の指導・治療を行っている。
 
 公益財団法人佐々木研究所が運営する付属病院。明治15年開院。
◆スタッフ数=担当医師5人
◆年間初診患者数(2014年)=約350人
◆肝臓がんの年間初診患者数(同)=約200人
◆無痛ラジオ波焼灼療法の実施数(同)=150例