有名病院 この診療科のイチ押し治療

【バレエ外来】 永寿総合病院・整形外科(東京・上野)

 同科は、1994年に国内初のバレエダンサー障害の専門外来(第一人者の故小川正三医師が担当)を開設。その4年後から同外来(毎週水曜の午後)を引き継いできたのが平石英一主任部長だ。これまで診てきたダンサー(初診)は約2000人に上る。
「最も多い世代は、やはり10代。コンクールに出るようになると、レッスン量が増えるので、どうしても障害を起こしやすくなります。患者さんは全国から来院され、海外のバレエ団に所属しているプロの方もいます」
 バレエダンサーが訴える症状の8割方は膝から下の足の痛み。痛むのはレッスンをしたときで、日常生活を過ごす分にはほとんど問題ないという。
「多いのは、爪先立ちなどバレエ特有の動きで足首の後方に痛みが出る『足関節後方インピンジメント症候群』や、スネや第2中足骨(足の甲)の疲労骨折です。足首や膝周辺の腱障害、半月板損傷もジャンプを繰り返すなどの過度の負担で発症します」
 ちなみに「インピンジメント」とは、「衝突・挟まる」という意味。関節内や関節周囲の組織同士がぶつかり合うことで痛みが生じている状態だ。軽症のうちは整骨院などへ行く患者も多いが、レントゲン撮影はできないため、診断がつかない。同科には時間が経って、重症になってから来院する患者が少なくない。
「ダンサーはオーディションや公演があると痛くても我慢してしまう。その気持ちはよく分かりますが、早く診察を受けることが大切です。治療の開始が遅れれば、それだけ治る時間が長引いてしまいます」
 治療は、まず内服薬や注射などで痛みや炎症を抑え、問題となる動作の制限が重要になる。練習は完全に休む必要はなく、練習の工夫をアドバイスする。保存的療法で改善されない場合は、手術での根治を検討する。
 手術はできる限り、術後の痛みの少ない関節鏡下手術で行っている。患部に2~3カ所、小さな孔を開け、カメラや器具を挿入して行う。
「特に、足首の下の距骨下関節などは、切開手術となれば、重要な靱帯を切らないと病変が見えません。靱帯を切ると、後遺症も多い。患者さんの術後のパフォーマンスへの影響を十分考えた最善の治療法を提示しています」
 全国的にバレエの障害に詳しい医師は少なく、同科には興味を持つ他院の医師や医学生が手術の見学に訪れている。近年、スポーツ整形外科領域で注目されている股関節唇損傷(太ももの付け根が痛む)もバレエダンサーには多く、股関節鏡手術が必要な場合には大学病院を紹介している。
 ちなみに平石主任部長は、ダンス関係者や科学者、医療関係者で構成される「日本ダンス医科学研究会」の世話人のひとりでもある。

 公益財団法人ライフ・エクステンション研究所の付属病院。日本初の人間ドックを開始。柳橋分院がある。
◆スタッフ数=整形外科医・常勤5人
◆初診患者数(2014年)=約3800人(うちバレエ外来は200人弱)