有名病院 この診療科のイチ押し治療

【アレルギー】 国立病院機構相模原病院アレルギー科(神奈川県・相模原市)

(C)日刊ゲンダイ

アレルギーのひとつである花粉症は鼻症状なら耳鼻咽喉科、じんましんなど皮膚症状は皮膚科が担当するが、同科が主に診るのは呼吸器を中心に複数の症状をもつ成人の全身のアレルギー(15歳以下は小児科)。受診者の半数以上を紹介患者が占め、気管支ぜんそくにおいては常時約3000人の患者をかかえている。同科を取りまとめる粒来崇博医長が言う。

「当院にはアレルギーの基礎研究を行う臨床研究センターが併設されており、国内最高レベルの病態、原因検索が可能です。5年前に発生した茶のしずく石鹸問題のような、新しい原因物質に対する診療を任される立場にあります」

 掲げる診療目標は、ガイドラインに沿ったアレルギー疾患診療の均てん化と普及。医療機関による治療の格差をなくすのが目的というわけだ。

 粒来医長は、厚労省の「アレルギー疾患対策の均てん化に関する研究班」のメンバーでもある。

 いったい、市中で行われているアレルギー治療の現場で、どんな問題が起きているのか。

「アレルギー疾患の多くはガイドラインに準拠した治療を徹底すれば、8割方は症状がほとんどなくなり、健康な人とほぼ同レベルの生活ができるまでにコントロールが可能です。その個別の患者さんに最も適した治療がきちんと行われていないのです」

 研究班の調査では、アレルギー科を標榜しながらガイドラインから外れた治療をする医師が結構多く、専門医にも見られることが分かった。

 たとえば、ぜんそくでは発作予防薬として吸入ステロイド剤を1日1~2回、常時使い続け、発作が起きた時には発作治療薬の気管支拡張剤(吸入)を使うのが正しい治療。

 それが予防薬は2割弱、治療薬は3割弱の人が服用していない。中には、発作治療薬を予防薬として定期的に使っているケースもあるという。

 食物アレルギーでは、短時間で急激に呼吸困難などの全身症状が出るアナフィラキシー反応が起こると命も危ない。そんな経験がある患者には、症状をやわらげる自己注射薬の処方が推奨されているが、実際に行われているのは5割である。

「子供のアナフィラキシーは学校給食があるので、全国的に対応できていますが、問題は大人です。一度救急搬送されても、その後に検査や指導してくれる“かかりつけ医”が非常に少ない。“どこも診てくれない”と困った末に来院する患者さんもいます」

 施設で診療内容にバラつきが出るのは、アレルギー疾患を常に勉強している医師が少ないことが背景にある。国内最大の日本内科学会の会員数は約10万人、消化器病学会でも約3万人、比べてアレルギー学会は約1万人しかいない。日本アレルギー学会は非学会員にも門戸を開き、学会への参加、講習会の開催を始めた。

「アレルギー疾患は30~40年前に比べて3~4倍増えていて、専門医だけでは対応しきれないのが現状です。一般医の診療知識を高めることが急務とされています」

 同科でも毎年、医師向けに300人規模の臨床アレルギーセミナーを開いている。

 臨時東京第三陸軍病院が戦後、国立病院となって発足。アレルギー・リウマチ疾患における国内の基幹病院。
◆スタッフ数=担当医師13人
◆年間初診患者数(2014年)=2296人
◆疾患割合=気管支ぜんそく5割、食物・薬剤アレルギー1~2割