有名病院 この診療科のイチ押し治療

【トモセラピー】 江戸川病院・放射線科(東京都 江戸川区)

(C)日刊ゲンダイ

 がんの放射線治療に、放射線治療装置とCTを一体化させた「トモセラピー」という最新機器を使った治療法がある。

 そのトモセラピーに特化し、世界で最も多くの症例数を誇る施設が同科の治療部門。1施設で3台も同時に稼働させているのは世界でもここだけだ。

 トモセラピーの最大の特長は、がんだけに高線量の放射線を照射できるところ。2010年4月に、限局(狭い範囲に限られている)したすべての固形がんに保険適用となった。その前年から同科を統括してきた浜幸寛部長が言う。

「トモセラピーは、精度の高い強度変調放射線治療(IMRT)ができる専用機器です。従来は患者さんの皮膚にしるしたマーキングを頼りに照射していたので誤差が大きく、十分な線量がかけられませんでした。トモセラピーは毎回CT画像でがんの位置を確認、患者さんは移動せず、その場で照射するので高い線量で治療できるのです」

 IMRTとは、多方向から放射線に強弱(濃淡)をつけ、がんの形状に合わせて“くりぬく”ように3次元照射する治療をいう。がん周辺の正常組織への線量も一般の放射線治療に比べ半分に抑えられるので、副作用も最小限に抑えられる。

 しかも、他の治療装置でIMRTを行う場合、放射線の照射口は通常7~9つしかないが、トモセラピーは円状に51方向から照射できる。

「らせん照射できるのも大きな特長です。たとえば脳と脊髄を同時に、広範囲にわたり照射する全脳全脊髄照射は通常の放射線治療ではできません。トモセラピーなら腸管や胸骨など大切な臓器への照射を極力抑えて治療することができます」

 同科の昨年のデータでみた部位別で多い順は、肺がん、大腸がん、前立腺がん、乳がん、骨腫瘍と続く。また、最近は他の病院から紹介されてくる膵臓がんの患者が急増しているという。

 実際の治療でかかる時間は、CTの位置合わせが5~10分、照射時間は普通の原発がんであれば3~4分ほど。月曜から金曜まで1日1回、トータルの回数はがんの種類で異なるが平均30~38回繰り返す。大半の患者が通院で治療を受けている。

「平日は21時まで受け付けているのも特色です。体力が落ちるなどの副作用が少ないので、ライフスタイルを変えなくていい。会社には内緒で治療を受ける方も多いので、仕事帰りに立ち寄れるように22時まで夜間照射をしています」

 最新機器といっても、すべてがコンピューター任せでできるというものではない。放射線科治療医、医学物理士、放射線技師、専任看護師の合議で治療計画を立てる。そのスタッフの技術、経験、チームワークによって治療成績や副作用の出方も施設で異なる。同科がトモセラピーに特化させてきたのも、その“精度管理”を徹底するためだ。

「主治医から紹介状をもらい、適応であれば小児がん以外なら誰でも受けられます。“放射線治療はできない”といわれても、あきらめないで相談してください」

データ
 戦前、東京・東小岩に結核療養所として開院し、1969年ごろから一般病院に転換。放射線科は日本大学医学部の修練施設。
◆スタッフ数=放射線治療医2人(非常勤5人)、治療スタッフ17人
◆初診患者数(2014年)=797人
◆治療患者数(2014年)=1216人