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【体に優しい脊髄手術】 新百合ヶ丘総合病院・脊椎脊髄末梢神経外科(神奈川県川崎市)

新百合ヶ丘総合病院の水野順一低侵襲脊髄手術センター長
新百合ヶ丘総合病院の水野順一低侵襲脊髄手術センター長(提供写真)

 首、腰の痛みや手足のシビレなど、背骨(脊椎・脊髄)が原因で起こる病気は整形外科の診療分野と思われがちだ。しかし、脳神経外科医が診療に当たる「脊椎脊髄末梢神経外科(脊髄外科)」という診療科がある。

 3年前の開院と同時に同科のトップを務める水野順一・低侵襲脊髄手術センター長(写真)が、違いをこう説明する。

「もともと整形外科は外傷外科から発展した科。脳神経外科とは教育から病態に対する考え、目的に違いがあります。簡単にいえば治す対象が『神経』か『骨』か。我々は傷んだ神経をいかに元の状態に回復させるかに主眼を置いています」

 薬や理学療法、神経ブロックなどの保存的治療は整形外科と同じだが、手術治療のやり方に違いがある。同科には、他院で保存的治療を受けても症状が良くならず、悩んで来院する患者が多いという。

 メーンは顕微鏡や内視鏡を用いる「低侵襲脊髄手術」だ。

「特に顕微鏡を使って繊細な手術をするマイクロサージャリーは低侵襲脊髄手術に欠かせません。脳神経外科が行う利点は顕微鏡に習熟していることです。脳神経外科医は6年間の研修を行いますが、その間、日常的に顕微鏡を扱います。さらに日本脊髄外科学会の認定医になるには、最低でも1~2年は指定の訓練施設でトレーニングを積むことになっています」

 筋肉や骨の損傷を極力抑え、最短のアプローチで緻密に病変を取り除く。結果、患者の体の侵襲・術後の痛みが少なく、入院期間が短く社会復帰が早いのが、低侵襲脊髄手術の特長だ。

 主な適応疾患は、首部であれば頚椎椎間板ヘルニア、頚椎症、頚椎後縦靱帯骨化症。腰部であれば腰椎椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、腰椎変性すべり症など。

「整形外科は骨が動くから痛むという考えから、金属を入れて骨を固定する手術が多く行われます。しかし、固定すると脊椎の他の部分に負担がかかる。脳神経外科は骨の可動性を残したまま痛みを取るという考えです。ですから金属を入れる大きな手術も、輸血の必要もないのです」

 国内の脳神経外科による脊椎脊髄手術の認知度はまだまだ低い。欧米や韓国では脊椎脊髄疾患の手術の75%は脳神経外科が手掛けているという。

 水野センター長は、日本脊髄外科学会理事であり、昨年の年次学術総会の会長も務め、これまで約3000症例の低侵襲脊髄手術の実績を持っている。

「首や腰の痛みは、最初に接骨院に行く患者さんが多いのですが、治療のタイミングを逃すと傷んだ神経は戻りません。2週間以上、痛みが続くようなら、きちんと病院を受診してもらいたい。低侵襲手術が体に優しい手術であることを念頭に置いて、脳神経外科(脊髄外科)の診察を受けることを勧めます」

 総合南東北病院(福島・郡山)を本院とする南東北グループの系列病院。2012年、神奈川県川崎市に開院。
◆スタッフ数=脳神経外科医5人
◆初診患者数(14年度)=948人
◆脊椎脊髄疾患手術件数(14年)=304件(うち低侵襲脊髄手術の割合74%)