健康は住まいがつくる

【換気と病気】 頭痛やアレルギー、子どもの成績不振は室内空気が原因だ

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

“いくら寝ても寝足りない”“頭痛やめまいがする”“体がかゆい”――。こんな症状は部屋の換気不足が原因かもしれないことをご存じだろうか?

 室内の二酸化炭素(CO2)濃度は建築物環境衛生管理基準によって1000ppm以下であることが求められている。

 通常、CO2の室内濃度が2500ppm(0.25%)を超えると眠気が起き思考能力が低下、3万ppmを超えると頭痛やめまい、吐き気が出るといわれている。

 米ローレンス・バークレー国立研究所とニューヨーク州立大学の研究では、24人の健康な人にCO2濃度「600ppm」「1000ppm」「2500ppm」の室内で2時間半過ごしてもらったうえで、意思決定を調べるテストを受けてもらったところ、CO2が上昇するにつれ、得点が著しく低下したという。

 同様な研究結果は国内外で出されており、CO2濃度が高くなると判断力が鈍ることがわかっている。部屋に閉じこもって勉強しているわが子の成績が振るわないとしたら、勉強部屋のCO2濃度と関係しているかもしれないのだ。

 しかも、CO2濃度が高い部屋は、臭気など他の空気汚染物質の濃度も高いことが多い。それがアレルギーを発生させる場合もある。国立保健医療科学院の林基哉統括研究官(工学博士)が言う。

「CO2濃度も無視はできませんが、近年、日本では換気の主な目的はシックハウス症候群の予防と考えられています。1990年代に建材から発散されるホルムアルデヒド等の化学物質で居住者に健康影響が出ることが確認され、2003年7月施行の建築基準法の改定で対策が取られました」

 この通称“シックハウス法”で義務づけられたのは、ホルムアルデヒドを発散する建材の使用制限と24時間換気システムの設置など。つまり、シックハウス法以降に建てられた建築物には、窓を閉め切った状態でも最低限の換気ができる換気装置がついているのだ。

 ここで言う、「最低限の換気」とは、1時間で、部屋の容積の半分の量の空気が入れ替わること。別名「0.5回換気」と呼ばれている。

「シックハウス法以降の住宅であれば、室内空気質のマーカーであるCO2濃度もホルムアルデヒド濃度も指針値を超えないと考えられています。そのうえ、常時換気することでハウスダスト、カビ、ダニの糞や死骸等のアレルギー物質の濃度も減らせます」

 ただし、冬は換気によって室内が乾燥して、インフルエンザの感染率を高めたり、アトピー性皮膚炎を悪化させる副作用もあるため、加湿も必要になる。インフルエンザの生存率データからいえば、室内湿度は40%以上に維持した方がいいという。

「問題なのは、まだ換気装置をうまく使いこなせていない家庭が多いこと。私たちの調査では、約半数の世帯が24時間換気システムを作動させていませんでした」

 最近の高断熱高気密住宅では窓を閉め切ったままの部屋も多く、換気装置を使っていなければ、逆効果になることが懸念されている。