新たな検査キットが注目 「接触性皮膚炎」対策の3ステップ

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 接触性皮膚炎は、毛染め剤、アクセサリー、金属などの物質に皮膚が触れ、数日後に炎症が起こる疾患。今回、新たな検査キットが保険適応になり、注目を集めている。東邦大学医療センター大森病院の関東裕美教授(皮膚科)に詳しく聞いた。

 接触性皮膚炎は、原因物質に触れる機会が多いほど発症リスクが高くなる。最初のうちは、「触れた後、肌がピリピリした」「軽いかゆみがあった」「赤くなった」など軽い症状だ。

「ところがある時突然、真っ赤に腫れ、強いかゆみがあり、じゅくじゅくした液が出るほどの強い皮膚炎が一気に現れます」

 さらに悪化すると、局所から全身に症状が広がる。軽症のうちは「見過ごし可能」だが、“境界点”を超えると原因物質に触れるたびに重症化し、ついには入院治療が必要になる。

 しかも、類似の構造を持つ身の回りの製品も接触NGになる。

 例えば原因物質に多い毛染め剤では、市販のかゆみ止めに含まれる麻酔成分、化粧品・外用薬などの防腐剤、染料などにもアレルギーが広がる。

 食品に含まれる物質に対して皮膚炎を起こすようになった場合は、さらに深刻だ。最たるものが金属。皮膚の金属アレルギーが重症化すると、違う箇所からも金属が吸収される。つまり、金属含有食品を多く摂取すると、汗経由で反応して全身に発疹が広がる。

 一例を挙げると、「硫酸ニッケル」は歯の詰め物、ピアスなどのアクセサリー、腕時計などに含まれている。これは、チョコレート、スパイス、缶詰、牡蠣、緑黄色野菜、そば、海苔などの食品にも含まれているのだ。

「歯科金属は炭酸や酢を取りすぎると溶けやすくなり、金属を含む食品を多く摂取した時と同様に、皮膚に発疹が出ます。口から入るものを皮膚でかぶれさせないことが、全身症状を起こさない大事なポイントです」

■新パッチテストは保険適応に

 しかし、それが周知されていない。実際、小麦入りせっけん(加水分解小麦含有せっけん)で皮膚がかぶれた後に運動をし、アナフィラキシー(粘膜、気道が狭くなり、呼吸困難などが起こる)が誘発された事例が続き、社会問題になった。

 治療の第1ステップは、ステロイド外用薬。場合によっては抗ヒスタミン薬の内服で正しく対処すること。

 治っても再発する場合は、第2ステップとして原因物質を明らかにして避ける。

 第3ステップは、皮膚質の把握と皮膚バリアー機能維持など、日常生活の注意だ。

「原因物質はパッチテストで調べます。原因が明らかであれば、関連するアレルゲンを皮膚に貼って確認できることがあります。原因不明なら、原因になりやすいスタンダードアレルゲンを皮膚に貼って確かめます。しかし、個々のアレルゲンを医師が輸入し、手間や時間、医療側の費用がかかるのに、保険点数が低いのでテストを行えない皮膚科施設が多い。これまでは全国でも3割程度しかパッチテストが行われていないのが現状でした」

 ところが今年、スタンダードアレルゲンを一気に検査できるパッチテストパネルが保険適応になった。皮膚科専門医が原因物質の追求を容易にできるようになり、治療の対策を立てやすくなる。

「陽性と出たアレルゲンは過去から現在、未来を示すアレルギー反応と考えてよい。生活改善対策がより明確になり、接触性皮膚炎を予防できる結果が得られます」

 今回のパッチテストパネル登場で、今後、接触性皮膚炎対策は大きな前進が期待できそうだ。

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