しなやかな血管が命を守る

【抹消動脈疾患】 突然の手足の痛みと冷感でパニックに

東邦大学佐倉病院の東丸貴信教授(C)日刊ゲンダイ

 実際、約7万人の患者が対象となった世界最大の「REACH研究」報告では、末梢動脈疾患の患者の50%に冠動脈疾患が、25%に脳血管疾患が認められています。しかも、患者の60%がいくつもの血管と臓器の病気を抱えていたのです。

 恐ろしいことに重症の末梢動脈疾患の人の5年間の死亡率は3割と報告されています。仮に足全体(下肢)の症状が軽くても、その後の経過(予後)は決して良くありません。これは、下肢の症状の悪化のみでなく、冠動脈や脳血管疾患による死亡率が非常に高いためです。

 足の動脈だけでなく、腕、腎臓、上腸間膜動脈などにも動脈硬化は起こります。腕の動脈の硬化はまれですが、手の痺れや脱力がみられます。上腸間膜動脈が徐々に詰まってくると食後にお腹が痛くなり、食欲が落ちて体重も減ってきます。腎動脈が徐々に詰まると腎血管性高血圧症や腎不全になります。

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東丸貴信

東丸貴信

東京大学医学部卒。東邦大学医療センター佐倉病院臨床生理・循環器センター教授、日赤医療センター循環器科部長などを歴任。血管内治療学会理事、心臓血管内視鏡学会理事、成人病学会理事、脈管学会評議員、世界心臓病会議部会長。日本循環器学会認定専門医、日本内科学会認定・指導医、日本脈管学会専門医、心臓血管内視鏡学会専門医。