役に立つオモシロ医学論文

福島の甲状腺がん増は原発事故の影響か

南相馬の秋(C)日刊ゲンダイ

 実際、甲状腺がんの検診が熱心に行われてきた韓国では、その罹患率が、それほど検診が行われていない英国の約15倍といわれており、「見つけなくても問題ない、治療の必要のない甲状腺がんを過剰に診断しているのではないか」などと指摘されています。

 この論文でも、「スクリーニングによるバイアス」の存在は認めています。気になるのは「これだけの増加はバイアスだけでは説明できない」としながらも、その根拠を明確に示していないことです。

 放射線が甲状腺がんのリスクファクターであることは確かです。しかし、韓国の事例で示されたように、スクリーニングを実施した地域(福島県)での発症率と、スクリーニングをしていない地域(日本の年間平均)を含む発症率の比較は、過剰診断の影響を軽視できません。

 この論文では福島県南東部を基準とし、福島県内各地域での比較も行われていますが、その解析ではリスクは増加傾向にあるものの統計的に有意な差は出ていません。この論文結果は慎重に解釈せねばならないでしょう。

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青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。