天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

劣化が早い生体弁と血栓ができやすい機械弁

順天堂大学医学部の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 生体弁は、ブタや牛の弁などを人間に使えるように処理したもので、自身の弁に近く血栓ができにくいという利点があります。しかし、耐久性が低い点がデメリットです。若い人ほど劣化が早く、35歳以下なら早い人だと10年以内、35歳以上は15~20年くらいで硬くなったり、穴が開いたりしてきます。そうなると、再び弁を交換しなければなりません。

 また、患者さんがステロイド薬を服用している場合は、抵抗力が落ちて有害な細菌を取り込みやすい状態になっているため、心内膜炎などの感染症を引き起こしやすくなってしまいます。そうした患者さんは、生体弁は好ましくありません。

 人工透析を受けている患者さんも、生体弁はあまりお勧めしません。弁の石灰化が早く、生体弁では5年程度で劣化による再狭窄を起こしてしまうからです。35歳未満の若い人、とりわけ10代の患者さんもすぐに石灰化してしまいます。その場合、最初から機械弁を使って20年以上もたせた方が望ましいでしょう。

2 / 4 ページ

天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。