このようなケースが多いため、実際には1カ月80ないし100時間を超える時間外労働を行っていても、会社としてはそれをカウントせず、結果として医師面接に上がってこない労働者も多数いるものと推測されます。
今回のストレスチェック制度が、そのような人の健康を守るために役立てられる可能性はあります。
しかし、そもそも、サービス残業という形での無償労働が常態化している点に問題があります。事業者には安全配慮義務、つまり労働者の健康を保持する義務があり、そのためにこそ実際の時間外労働を正確に記録すべきです。
労働者も自身の時間外労働時間を自己保健責任の一環として、タイムカードとは別個に記録に残せばいいのです。サービス残業時間中は、極論すれば“事業所の安全配慮義務の下に置かれていない”ことになりますので、労働安全衛生法の「面接指導等」を受ける権利を失うことになります。
私ども医師は労務管理の専門家ではなく、健康管理の専門家です。しかし、ストレスチェックに関わることになると、いや応なく労使の微妙な対立構造の中に置かれます。複雑な心境です。
薬に頼らないこころの健康法Q&A