真似したい伝承療法

佐賀県の海茸

佐賀県の海茸
佐賀県の海茸(C)日刊ゲンダイ

 佐賀県の伝統食材のひとつ、海茸。“茸”といってもキノコではなく、二枚貝の一種だ。

 その海茸の水管(水の入手口)を細く切り、粕漬けにしたものは、佐賀県の郷土料理として古くから食されてきた。

 佐賀県在住で、“海茸の粕漬け”を製造・販売している玄海漬の髙田庄一朗さん(51)はこう話す。

「海茸の水管は、コリコリとした食感が特徴です。粕漬けにすると特においしくなり、ご飯のお供や酒のつまみには最高ですね」

 二枚貝はグリシンやコハク酸などのうま味成分が豊富に含まれており、おいしさは保証つき。粕漬けにすることで、独特の香りと風味がプラスされる。

 また、味だけではなく、海茸は栄養価にも非常に優れている。糖質、脂質、タンパク質といった3大栄養素をバランスよく含み、良質なエネルギー源となる。

 EPAやDHAが豊富な点も大きなメリット。EPAは血小板の凝集を抑え、血液をサラサラにして血栓の形成を防いでくれる。

 DHAは脳の神経細胞を活性化して情報伝達をスムーズにし、学習能力や記憶力の向上に役立つ。傷ついた脳の神経細胞を修復する働きがあることから、認知症の予防も期待できる。

 また、アミノ酸の一種のタウリンを多く含んでいる。タウリンは肝機能を高め、解毒作用も強化してくれる。血圧や血中総コレステロールを下げて、善玉コレステロールを増やす働きもある。

 実際、海茸を食べてみたところ、ビールとよく合い、箸もお酒も止まらなかった。

 肝臓によいタウリンが多いから、少しくらい飲みすぎてもいい……と信じたい。

宮岸洋明

宮岸洋明

1965年、石川県生まれ。出版社勤務後、95年、健康ライターとして独立。以来20年、健康雑誌などで取材・執筆活動を開始。本連載では、世界的な長寿国である日本の伝承料理がテーマ。「健康長寿の秘訣は“食”にあり」をキーワードに、古くから伝えられてきた料理や食材を実食し、その栄養価、食味や調理法を紹介。筆者自身も、約1年前から数々の伝承料理を食べ約20キロのダイエットに成功。メタボを脱出し、健康診断もオールA。