家計簿を見れば病気がわかる

わずかな赤身でも大腸がんは増えている

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 肉中心の食事を続けていると、大腸がんにかかりやすいといわれています。ただし悪いのは赤肉(牛・豚などの赤身肉)です。鶏肉など色の薄い肉は、大腸がんと関係ないといわれています。実際、世界各国の1人当たりの赤肉の消費量を横軸に取り、大腸がんの罹患率を縦軸に取ると、ほぼ直線関係にあることが分かっています。

 日本は世界的に見れば、肉を食べない国民ですから、大腸がんもかなり少なめです。しかし食の欧米化に伴って、じわじわと増え続けています。死亡数は、肺がん、胃がんに次いで、第3位です。

 昨年、国立がん研究センターが、全国の都道府県のがん罹患率を公表して話題になりました。

 それによれば、大腸がんの罹患率が高い県は、男性で青森・岩手・秋田・長野・三重・和歌山・鳥取・島根・長崎など。また女性では北海道・青森・岩手・秋田・三重・京都などとなっています。男女とも高いのは東北3県と三重県です。

 この4つの県の肉の購入量をまとめて表にしてみました。

 東北3県は牛肉が少なく、豚肉が多い傾向にあります。逆に三重県は牛肉が多く、豚肉は少なめです。しかしこれら4県が、際立って赤肉が好きというわけではありません。ちなみに鶏肉と加工肉(ハム・ソーセージ・ベーコン)については、他の都道府県とは大きな違いはありません。

 大腸がんの多いニュージーランドやアメリカ、カナダなどは、毎日1人当たり250グラム以上の赤肉を食べているそうです。罹患率は、日本の15~20倍以上にも達します。一方、日本は牛と豚合わせて、1世帯(2人以上の世帯)平均で年間25.9キログラム、1日当たり80グラムにすぎません。1人当たりに直せば40グラム以下です。東北3県や三重県の消費量の違いなど、世界規模で見れば誤差の範囲というわけです。

 むしろ、これだけわずかな赤肉しか食べていないのに、大腸がんが着実に増えていることのほうに注目すべきです。このまま肉食が増え続け、毎日100グラムの赤肉を食べるようになれば、大腸がんのリスクはいまの5倍前後に上昇するはずです。牛と豚を控えめにし、肉はできるだけ鶏を中心に取るべきでしょう。

長浜バイオ大学・永田宏教授(医療情報学)

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。