「睡眠時無呼吸症候群」で有効のはずが “ASVマスク”の危険度

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 同試験は08年から中枢型を主体とする睡眠時呼吸障害を合併する重症の慢性心不全の患者(左室駆出率45%以下の収縮機能不全)1325人を対象に実施された。長期における予後改善が期待されていたのだが、解析の結果、ASVを使用したグループの心血管死亡率は10%で、ASVを使用しないグループの7.5%に比べて有意に多いことがわかった。

 この結果を受け、米国睡眠学会などは「左室収縮機能が低下(左室駆出率45%以下)した慢性心不全かつ中枢性睡眠時無呼吸の患者に対してASV使用を制限する」と提言。日本循環器学会と日本心不全学会も、同様の患者へのASV使用を「慎重に検討すべき」と発表している。

 東邦大学医療センター佐倉病院循環器科の東丸貴信教授は言う。

「中枢性無呼吸は、呼吸筋を休めて肺容量や気道内圧を増加させ、交感神経を鎮めて心不全を改善させようとする作用もあります。心臓の動きが悪いタイプの心不全患者がASVを使うと、この作用を弱めてしまう可能性があるのです。また、気道内圧が不適切に上がると、心機能が傷害される可能性も考えられます。心臓の動きが比較的良い患者さんでは問題ないようですが、重症心不全の一部の患者さんは注意が必要です」

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