独白 愉快な“病人”たち

プロゴルファー 田原紘さん (72) 一過性脳虚血発作 ㊦

(C)日刊ゲンダイ

 記憶力や論理的思考にも不具合を起こしていて、病後、連載の原稿を書くと、自分が思った通りに書き上げたつもりでも、妻と娘がチェックすると「文章がメチャメチャ。編集部に送れる内容ではない」と言う。

 さらに3年目には、前回とは別のところに梗塞を起こしたあとも見つかりました。

 しかし、そんなことも落ち着いて、何も気にせず歩けるまでに回復したんです。そんな時、30年以上使っていた“サイン”を脳が忘れて書けなくなった。これが書けないとオーストラリア銀行に預けた優勝賞金が下ろせない。

 とはいえ、この体でオーストラリアまで飛行機に乗るのは危険なので、気がかりだけど放っておくしかなかった。脳梗塞は2度目が怖いと聞いていたので、病後はプロアマの招待も断り、外に出る仕事は全て断っていました。

 頼りは、日刊ゲンダイの連載をもとに単行本化した書籍をはじめ、60冊超の著書の印税。40代は激務だったけど、あの時本を書いておいてよかった。おかげで収入が途絶えても、心の余裕がありました。

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