独白 愉快な“病人”たち

タレント 稲川淳二さん (66) 前立腺がん ㊦

(C)日刊ゲンダイ

 さて今日も怪談話をという段になり、集まっている顔を見ると、奥に看護師長さんがいた。その日は、師長さんが体験談を話してくれましてね。

 深夜に巡回していると誰もいないはずの奥の部屋からテレビの明かりが漏れていて、壁にぴたりとつけて置いてあったテレビがベッドのほうに向いている。この病室で亡くなったおじいちゃんが同じようにテレビを傾けて見ていたと……。
「その部屋って、もしかして?」と聞くと、「稲川さんの隣の部屋です」って。

 いや~、私のほうがやられちゃいました!その時聞いた話は翌年、怪談ネタとして披露させていただきましたよ。

 今の病院は病は治すけれども、病気の「気」を治すことを忘れています。でも、気を治さないと寿命を縮めることにもなりかねないと私は考えているんです。私の知り合いも私と同じ前立腺がんの手術をし、放射線治療に通っていたんです。彼は病気のことばかり鬱々と考えているうちに深酒をするようになり、泥酔して階段から落ちて亡くなった。がんは取り除いてもらえたけれど、死の恐怖を植え付けられてしまったんじゃないかな。

3 / 4 ページ