独白 愉快な“病人”たち

お笑い芸人 中川パラダイスさん (33) 網膜剥離

(C)日刊ゲンダイ

網膜剥離の手術をしたのは昨年12月。「THE MANZAI」で優勝し、やっと仕事が増えると思った矢先でした。
「左目がほとんど見えへん」って嫁に話したら、嫁がもろもろ手配してくれ、1週間後に近くの大学病院に即入院。翌々日に手術をしました。「あと3日遅かったら失明」って医者から言われました。でもあれ、医者が恩売りたいだけちゃうか、と思うんですけど。

 実は3~4カ月前に左目の右上端に黒い点みたいなのができて、舞台の照明が左目だけやけにまぶしい。次第に見えない部分がだんだん広がってきて、見えないけれど光は通るので、舞台に立つと左目の奥が痛くなって。線もグニャリとゆがんで見えていたんです。僕、極端なめんどくさがりで、放っていたんです。

 網膜はレンズを挟んでさかさまに映像を映し出しますから、僕の場合、右上端の反対、左下端の網膜が剥がれていた。網膜の下端だったから、重力の助けもあって進行が遅かったそうです。

 手術は2回。1回目は、網膜の剥がれている部分を治す手術。2回目は5カ月後、1回目に剥離した部分を固定するために入れたシリコーンオイルを抜き、ハードコンタクトのような眼内レンズを入れる手術でした。

 入院した大学病院では、患者の病状を学生に説明する時間がありました。

薄暗い部屋に学生を集合させ、僕の患部を大画面プロジェクターに映し出し、30人近い学生の前で「これはひどいな~、これは手術も難しい」って説明している。終わってから「大丈夫ですよ」って笑顔向けられても不安ですわ !!

 目の奥なんて説明聞いても想像つかず、言われるがまま全身麻酔で1回目の手術。術後3日間が地獄でした。あおむけ寝だと重力で網膜が剥がれやすいということで、うつぶせ寝で3日間絶対安静。そのせいで今度は腰痛。ひたすらバンテリンを塗ってました。

 4日後にうつぶせ寝から解放され、読書でもと思ったら、看護師さんが30分おきに「いかがですか?」って聞いてくる。1人でいいのに3人に増え、こんなところで急激に知名度が上がったことを実感しました。

 暇つぶしに動画でも見ようとiPadを買ったら、僕の携帯と同期して女の子にメール送るとiPadにデカデカと出る。嫁に浮気がバレるかもとドキドキする羽目に陥り、動画も楽しめへん。2回目の手術では電源すら入れませんでした。

 退院後、目は問題なく快方に向かっていると思っていたら、ある日突然、目と全然関係ない右腕が上がらなくなって……。まさかの五十肩。目をうまく使えないせいで反対側の肩にきた。目が体に与える影響ってすごいもんです、最初の1週間はホンマに動かない。いまだにスッとてっぺんまでは上がらないし、右腕を上げるのが怖い。

 5月末に2度目の手術が終わり、あとは様子見です。やっと有名になれると思った途端に入院、相方が1人で仕事をこなしているうちに、最近は相方1人で仕事をもらうようになっています。僕、チャンスなしですよ。ホンマ、タイミング悪いと思います。

 もともと視力0.02で、母も叔母も目の手術をしていて、僕は遺伝的に目が弱いタイプなんです。それが、手術のおかげで左目が0.6。今までより見えるようになったのはいいことかな。あとは府民共済で、1回目の手術で20万おりたのはうれしかった。2回目の手術でいくらもらえるのかワクワクしてます。ま、僕だけやったら、放っておいて失明してたやろうから、嫁のおかげなんですけどね。

▽1981年大阪府生まれ。高校卒業後、吉本興業養成所NSCに入学。2008年9月に養成所で1年先輩の村本大輔とウーマンラッシュアワーを結成。「THE MANZAI 2013」で優勝し、賞品としてテレビ番組「TOKYOラッシュアワー」(フジテレビ系、木曜深夜)の司会を獲得。