ムエタイはヒザ蹴りやヒジが目に入りますからね。形勢が不利な時や、全5ラウンド続けたら体のダメージが大きいと判断した時は、相手の目を狙う。目の皮膚は薄くてパックリ切れて流血するから、ドクターストップで試合を終えることができる手段でもあるんですよ。とにかく目はケガが絶えませんでした。
1998年の日本タイトル防衛戦の試合中に食らった左目のカウンターパンチで、目に火花が飛んで、見えなくなった。試合は続行し、KO勝ちしましたが、収斂筋膜が再生不可能になり、左目はほぼ見えなくなった。
左右の目で合わせて像を見ることができなくなり、パンチのセンターから開いてしまう。下を向くとさらに焦点が合わなくて、コンビニでお釣りを渡されると、どこに店員さんの手があるか分からないんですよ。
目をきっかけに今度は腰のヘルニアも悪化して。右目だけでものを見るから視点が狂う。それを調整しようとして体の左右バランスも悪くなり、腰に痛みが走るわけです。
独白 愉快な“病人”たち