独白 愉快な“病人”たち

講談師 一龍斎 貞水さん (74) ㊤

(C)日刊ゲンダイ

 ひとつはラジオ波。狙いをつけて電子レンジみたいに「チン!」って退治する方法だそうで。で、もうひとつは、患部切除。ラジオ波は他の病院に行かなきゃ設備がないというので、切除を選びました。

 切るのは大したことないが、がんの位置が問題でね。肺の動脈のそばにがんができていて、動脈にも根を張っているかもしれないというんです。もしそうなると、手術中に人工心肺を使う大手術になると脅された。でも、何のことはない。がんをピンピンッて揺さぶったら剥がれたって。悪運が強いんだよ。

 その後は抗がん剤治療。医者にもつらいと言われたけれど、昔から酒ばっかり飲んで二日酔いが常。吐き気も倦怠感も慣れていたからちっとも苦じゃなかった。それに、高座に上がると病気なんてすっかり忘れますからね。抗がん剤治療中も休まず仕事を続けました。

 もちろん副作用はありました。体毛からまつ毛まで、毛という毛は全部抜けた。そしたら医者がね、「頭はそのせいじゃありません」って言うんだよ、ワッハハ。ハゲてるのはオレが分かってるよ。

(つづく)

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