独白 愉快な“病人”たち

漫画家 武田一義さん (38) 精巣腫瘍 ㊦

(C)日刊ゲンダイ

 精巣腫瘍が分かった時は、奥浩哉先生のアシスタントのひとりとして「GANTZ」の連載などを手伝っていました。非常に恵まれた環境で、つい安穏として、「漫画家」になることを先延ばしにしていました。

 ところが入院中、さまざまな気付きを得ることができたんです。抗がん剤のせいでベッドから起き上がれなかったり吐き続けたりと、しんどい日々でしたが、漫画家へのチャンスをつかむことができたことを思うと、そう悪くはなかった4カ月間でした。

 だって、闘病中に書いた「さよならタマちゃん」が初の連載になり、単行本化され、しかも今年、「マンガ大賞」にノミネートされたのですから……。

 入院中に「漫画家」って呼ばれたのも大きかったですね。入院仲間はアシスタントなんて理解できないから、僕の職業は「漫画家」にされていた。単なる誤解なんだけど、その言葉に後押しされたところもあったと思います。

1 / 4 ページ