独白 愉快な“病人”たち

漫画家 武田一義さん (38) 精巣腫瘍 ㊦

(C)日刊ゲンダイ

 一時はペンも持てなくなり、先が見えない不安に襲われましたが、自分が本当になりたかったものがクリアになり、かえって漫画を描きたいという信念が強まりました。

 また、病気になって改めて人のありがたみ、人の美しい部分に触れることができました。奥先生は僕の席を空けて待っていてくれ、表面上だけでなく大切にしてくださっていたんだと痛感しました。

 フリー稼業は保証がないので、病気が長引いたら生活保護のお世話になるしかないと覚悟していましたが、仕事がなくなる怖さを感じずに、治療に集中できたのは非常に助かりました。

 その後転移もなく、今3年目になります。一度は毛という毛がすべて抜けましたが、現在はもとに戻りました。後遺症は、手に力が入らないことと感覚が鈍いこと。常に手にゴム手袋をはめているような感じがします。

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