独白 愉快な“病人”たち

漫画家 武田一義さん (38) 精巣腫瘍 ㊦

(C)日刊ゲンダイ

 親指に力が入らないので、握り方は子供がお絵かきするときのようなグー握りに変えました。さいわい、今はパソコンのタブレットのおかげで筆圧がいらないのでなんとかなっていますが、やはりもどかしさは残ります。

 手術前、無精子症になる可能性もあるとのことで、リスク回避のため精子保存もしました。保険適用外なので初期10万円くらいかかり、あとは年2万円くらいの保存費用がかかります。でも、僕たちは今のところ保存精子を使わないつもりでいます。

 妻も漫画家で体もあまり強い方ではないので、無理して子供を産むことに力を注ぐよりも、彼女が作品を描いて生き生きしている姿が一番だと思ったんです。妻との出会いは、僕が彼女の作品に一目惚れしたのがきっかけでした。だから、彼女の作品が僕たちの子供で十分。何より僕が一番のファンなので、作品が読みたいんです。今夏、妻も同じ「イブニング」で連載が決まり、2人で創作活動に励んでいます。

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