独白 愉快な“病人”たち

漫画家 武田一義さん (38) 精巣腫瘍 ㊤

(C)日刊ゲンダイ

 ところが、手術の前日にもっと重大なことが判明……。がんが肺に転移しているのが見つかったんです。抗がん剤治療をすると無精子になる可能性があり、たとえそうならなくても、精子の質が悪くなる可能性もあるというので、自費で精子保存をしました。各所に「入院が長引くかも」と説明の電話を改めてしていたら、シャワーに入る時間すらなくなってしまうほど慌ただしかった。

 いざ手術……。そういう時、大病院では患者は研修医の練習台でもあります。僕の場合もぞろぞろ若い医者が集まり、患部を見られた。手術前の麻酔は、麻酔を打つのが初めての医師で、表面麻酔して痛みはないものの、不安げに背骨の腰の辺りで針を出し入れしているのが分かるんです。

 しかも麻酔が効きすぎて首から下がマヒし、意識的にしなければ呼吸が止まってしまう状態になりました。それから握力が戻るまでは医師もヒヤヒヤだったそうで……。ちょっとした医療過誤になるかもしれなかったんです。

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