独白 愉快な“病人”たち

元プロレスラー 小橋建太さん (47)

(C)日刊ゲンダイ

 とはいえ、がんと診断された時はショックでね。がんの程度も、治療方針も説明なく、事実だけ伝えられたもんだから、帰りのタクシーでは、プロレスラーになってからの思い出が走馬灯のように駆け巡った。いくつものチャンピオンベルトを巻いて、ファンのみんなに応援され、最高のプロレス人生だったな、って。俺の人生=プロレスしかないということを再確認した瞬間でした。

 右の腎臓を切除してからは抗がん剤治療と食事制限。レスラーとしては筋肉をつくるタンパク質が必要なのに、腎臓に負担をかけるからNGなんです。そこで体を保つために脂質だけをとる。鉛筆の芯のように細いエビに分厚い衣のエビフライを食べていました。糖尿病と逆でエビの香りのついた衣だけ食べるようなものでした。

 昨年、おふくろが大腸がんで手術してね。術後にステンレスの膿盆に切除した臓物を見せられ、さすがに引いたけど、「俺も(切り取った)腎臓を見せて、親不孝したな」と思ったね。おふくろは今じゃ元気になって俺より食べてます。これも早期発見のおかげだよ。

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