天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

TAVIの登場で生体弁を使うケースが増えた

順天堂大学医学部の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ


 大動脈弁狭窄症で弁を人工弁に交換する手術をすすめられています。人工弁には生体弁と機械弁の2種類があるようですが、どちらにしたらいいでしょうか。(40歳・男性)


 現在、日本で一般的に使用できる人工弁には「生体弁」と「機械弁」の2種類があり、どちらも利点と欠点があることは、前回お話ししました。また、最近はある一定以上のサイズ(21ミリ)の弁を入れられる患者さんには、生体弁をすすめるケースが多くなっていることにも触れました。

 生体弁は、働き盛りの年代では12~15年経過すると劣化が避けられないため、将来的に再び弁を交換しなければならないという“弱点”があります。しかし、「TAVI」(経カテーテル大動脈弁留置術)という血管内治療によって、再び開胸して手術する手間をかけずに新しい生体弁に交換することが可能になってきました。この方法によって、生体弁の寿命を気にかけることが大きく減じたのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。