Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

【アンジェリーナ・ジョリーさんのケース】乳房切除を決意させた遺伝性は…

アンジェリーナ・ジョリー、ブラット・ピット夫妻(C)日刊ゲンダイ

 こうした家族的な背景から、ジョリーさんは遺伝子検査を受けたところ、BRCAの変異が見つかり、乳がんになる可能性は87%、卵巣がんは50%以上と指摘されたそうです。それで、最初にリスクの高い乳房切除手術を受け、経過を見て卵管などを切除することを計画。今年3月には、卵巣と卵管の切除を公表したのです。

 さて、女性の100分の1程度に過ぎませんが、男性にも乳がんができることがあります。この男性乳がんのほとんどにBRCAの変異が関係。その変異を持つ男性は、若くして前立腺がんや膵臓がんになりやすいという報告もあり、男性も無関係ではありません。

 もっとも、がんの原因のうち、遺伝が占める割合は5%程度。90%は遺伝とは無関係なタイプですので、遺伝性乳がんを過度に心配する必要はありませんが、乳がんの患者数は年々増えていて、新規発症者は約6万5000人。日本人女性の12人に1人が乳がんになる計算で、今や、女性がかかるがんのトップが乳がんです。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。