脱毛症治療薬が精子を減らすことも…「男性不妊」AtoZ

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 男性に原因がある「男性不妊」の数は52万人と推測される。男性不妊を専門に治療を行う「恵比寿つじクリニック」の辻祐治院長に話を聞いた。

 男性不妊の原因は、勃起不全や射精障害だけではない。「精子の数が少ない」「精子の動きが悪い」「精索静脈瘤などの疾患がある」「精管が詰まっている・欠損しているなど、精子の通り道に問題がある」といった精液に関わる原因もある。

「精力と“妊娠力”は違う。精液検査を受けないと、自分がどういう状態かはわかりません」

 精液検査には、自宅で精液を採取して医療機関に持ち込む方法と、医療機関で採取する方法がある。恥ずかしさから、自宅採取を選ぶ人もいるだろう。しかし、精子の動きは気温の変化などの影響を受けやすく、採取から検査まで時間のロスが生じる自宅採取では、正確な判定ができない。

「医療機関に行く時間がない人もいるでしょうから、1回目は自宅採取でもいい。しかし、もし精子に問題が見られれば、医療機関で採取して検査を受けてください。場合によっては、2回以上行うこともあります」

 男性の性機能を専門にするのは泌尿器科。精液検査だけなら産婦人科でも行っているところはあるが、専門外だ。

 そのため、精子に問題があっても、男性不妊の原因を調べて治療を行うことをせず、人工授精、体外受精という「女性側の治療」に進むことが少なくない。

「男性不妊でも、最終的には女性の心身に負担をかける体外受精になります。しかし、その前に男性側の問題を解決することで、体外受精までいかずに妊娠に至るケースがある。体外受精の成功率も高めます」

 だから、男性不妊が疑われるなら泌尿器科。ただし、泌尿器科ならどこでもいいわけではない。

 泌尿器科の疾患には、前立腺がんやLOH症候群(男性更年期)などもある。男性不妊の専門外では、精液検査にその場で対応していない場合もあり、別の検査機関に送られるので正確に調べられない。男性不妊治療を掲げる医療機関を探して受診すべきだ。

 男性不妊は「精液検査→精子に問題があれば原因追求」と進む。原因が精索静脈瘤やホルモン分泌異常ならそれらの治療、精子が精液に見当たらない「無精子症」なら精子の通り道に問題があるかを調べ、それぞれに応じて、精巣から精子を採取する手術「TESE」や「micro-TESE」などが検討される。

 無精子症は1回の検査では不十分。少なくとも2回以上、できれば3回以上繰り返すべきであることもしっかり押さえておきたい。

 精子の状態を良くするには、「正しい生活習慣」が重要なのは容易に想像がつくだろう。しかし、本人が気づかないうちに精子に悪影響を与えていることがある。

「男性型脱毛症の治療に用いるフィナステリド(薬名・プロペシア)は、精子を作る能力を衰えさせます。男性ホルモンの補充療法も、同じ結果を招く。市販の精力剤には男性ホルモンが入っていることもあるので、確認したほうがいい」

 フィナステリドは、服用をやめれば精子を作る能力が“復活”する。

 読者には自身に当てはまる場合と、「孫がなかなか生まれない」という場合とがあるだろう。それは、もしかしたら……。

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