健康は住まいがつくる

【高断熱住宅】心臓病や脳血管障害の有病率が20%以下に

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 日本ではアレルギー疾患が30~40年前に比べて3~4倍も増加した。その解決の糸口が見つかりそうだ。

 2010年の日本建築学会のシンポジウムで、断熱性の低い寒い家から高断熱住宅へ転居すると、アレルギー疾患をはじめさまざまな病気の有病率が減るという衝撃の研究報告が行われた。

「一戸建て1万軒1万人調査」と呼ばれる研究に参加した慶応義塾大学理工学部・システムデザイン工学科の伊香賀俊治教授が言う。

「高断熱住宅を新築した持病をもった人に、住み替えた後にその病気がどうなったかを聞いたアンケート調査です。重い病気は発症率自体が低く、十分なデータが集まらなかったため、はっきりしたことは言えませんが、それでもすべての病気において有病率がきれいに減少しています」

 具体的な「転居前→転居後」の有病率は別項の通り。なぜ、このような結果が表れたのか。

 高断熱住宅は“結露”が起きない。そのため、アレルギー疾患の原因物質となるダニやカビの発生が抑えられる。灯油ストーブやファンヒーターなどの使用が減り、室内空気の汚染が少なくなるため、呼吸器官にもいいという。

「室内が暖かいと血圧の抑制、活動量の増加につながります。さらに、高断熱住宅は遮音性能もあるので騒音ストレスが軽減され、睡眠の質の向上にもつながります。そうした複合的な要因により、病気を寄せ付けないのだろうと考えています」

 本来、高断熱住宅は省エネ対策が目的だが、健康にもいいとなると一石二鳥。仮に普通の住宅リフォームに断熱工事を加えると、少なくとも100万円余分に費用がかかる。

「光熱費で100万円の元を取るには29年かかるといわれています。しかし、高断熱住宅によって病気にならない健康の利便性(医療費や給料減など)を加算すると、16年で元が取れる計算になります。さらに、健康保険で払う公的負担便益(保険料の軽減)を加算すると、11年で元が取れるのです」

 心疾患や脳卒中で倒れれば、運良く命は助かったとしても後遺症で仕事はできず、介護する家族の収入が減り、生活が追いつめられるケースが多い。いまは、健康効果と同時に高断熱住宅で得られる経済的便益のより詳しい研究も進められているという。