床にビー玉を置いて転がり出すのが約0・6度といわれている。それくらい微妙な傾きでも体調不良につながる恐れがあるのだ。
■真っすぐ泳げなくなることも
慶応大学理工学部システムデザイン工学科の小檜山雅之准教授は、11年8月に東日本大震災で液状化被害を受けた千葉市美浜区の住民の健康障害に関する調査を実施。傾いた住宅で暮らす人々から、数々の体調不良の訴えがあったという。
「もちろん個人差はありますが、おおむね0・7度の傾きで、健康被害を訴える住民が増えました。われわれは、床や建物が真っすぐであることを前提に生活しています。しかし床や建物が傾いていると、視覚から入る情報と、耳の中の器官や体が感じる重力の方向にズレが生じ、違和感を覚えます。そうした環境で長時間生活していると、平衡感覚の障害や体の調子を整えている自律神経の失調が起こり、健康障害が表れると考えられているのです」