また、視覚の情報により頭を床と垂直に保とうとする方向と、体を真っすぐに支えようと踏ん張る方向が、傾きによってズレてしまうと、本来なら使わなくてもいい筋肉を常に緊張させることになる。それが血行不良につながり、頭痛や肩こりを起こす原因にもなる。
違和感による精神的なストレスから食欲不振や不眠などの症状を訴えたり、傾いた住宅で低い側に頭を向けて寝ることで頭痛を起こしたりするケースもある。
小檜山氏の調査では、逆に床や建物の傾きに慣れてしまい、それが体調不良につながる例もあったという。
「人間には順応性があるので、徐々に傾きに慣れていく場合もあります。傾いた住宅で暮らしていても問題なかった男性が、傾きがない屋外に出たときにめまいがするという訴えがありました。傾きに順応してしまった高齢女性は、水泳のためにフィットネスクラブに通っていたのですが、真っすぐ泳げなくなってしまったといいます」
横浜の傾きマンションのような施工不良だけでなく、軟弱な地盤に建てた住宅が徐々に沈下して傾く被害も珍しくないという。少しずつ床や建物が傾いてきて、自分では気づかないなんてこともある。原因不明の体調不良が続いたら、家の傾きを確認してみてはどうだろう。