耳鼻科の病気

花粉症治療は11月末がリミット

「来年のことを言えば鬼が笑う」ということわざがあります。“将来のことなど予想できるわけないのだから、あれこれ言ってみても始まらない”という意味ですが、こと花粉症対策については当てはまりません。

 今年の春先に花粉症の症状に悩まされた人は、来年も同じ苦しみを味わいます。予想できる将来のために、いますべき花粉症対策のひとつが「舌下免疫療法」です。

 これはスギ花粉に反応する体質そのものを改善する治療法です。スギ花粉のエキスを毎日舌下に投与して、アレルギー反応をだんだん弱めていくのです。アレルギーは体を守るための免疫が過剰になってしまい、自分自身を攻撃してしまうことで起こります。舌下免疫療法は、この免疫の攻撃力に働きかけて、過剰にならないようにします。 以前から、スギ花粉のエキスを注射する方法はありましたが、毎回病院に通って注射してもらう必要があり、注射も痛いのが難点でした。舌下免疫療法は、薬をもらいに病院に行かなければなりませんが、自宅で行え、痛みもないのが特徴です。1日1回、自宅で舌下に投与し、少なくとも2年間は続ける必要があり、3~5年の治療が推奨されています。

 治療開始は、遅くともスギ花粉症の症状が出る2~3カ月前です。つまり1月から症状が出る人は10~11月より前から、2月に症状が出る人は、11~12月より前から始めるのが理想です。

 多くの地域において、1月上旬にはスギ花粉の初飛来が確認されています。そのため、地域を問わず、基本的には1月以降のスギの舌下免疫療法の初回投与は控えるようになっています。これらを考えると、舌下免疫のスタートは、遅くとも12月中になります。

 実際の治療はまず、診療所でスギ花粉のアレルギーがあるかを確認します。投与初日は、やはり1時間ほど診療所で時間がかかるうえ、その後も何回かは通院してもらわないといけません。

 12月は仕事が一番忙しく、忘年会も目白押し。正月休みもあるので、治療スタートは実際には難しいといえます。11月末がスギの舌下免疫療法のスタートのリミットと考えてもいいでしょう。

大場俊彦

大場俊彦

慶應義塾大学大学院博士課程外科系終了。医学博士甲種日本耳鼻咽喉科学会認定専門医。日本レーザー医学会認定専門医。日本気管食道科学会認定専門医。米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会フェロー。国際レーザー専門医。厚生労働省補聴器適合判定医・音声言語機能等判定医。日本耳鼻咽喉科学会騒音性難聴判定医・補聴器相談医。