独白 愉快な“病人”たち

落語家 林家こん平さん (71) 多発性硬化症 ㊦

(C)日刊ゲンダイ

 フラッシュがたかれると目が輝いて、気合が入る。「チャラ~ン!」とポーズをとると、曖昧だった記憶がよみがえってくるんです。だって、倒れた当時のことなど覚えていなかったのに、取材中は、ペラペラ話せる。自分でも不思議です。なんだかスイッチが入るんですよ。

 娘に言わせると、フラッシュや照明の光が神経に刺激を与えて、神経が再生されるんじゃないかって。以来、娘はリハビリを兼ねて体に無理のかからない範囲で、コンスタントに仕事を入れてくれています。今じゃ娘とコンビ芸ですよ。

 もともと糖尿の症状もあるので、食事改善をしていますが、出来合いのものが嫌いでね。病院食はあの器についた消毒のにおいが耐えられない。レトルトの糖尿病食を家でそのまま出されても食べる気にならない。糖尿でも食だけは譲れないんです。

 それで、娘は温野菜を足したり糖尿病食をアレンジしたりして、食べさせてくれています。特に三女が食事に気を使い、毎日作ってくれています。こうやってわがままできるのも、実の娘たちだからですが……。

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