独白 愉快な“病人”たち

元サッカー選手・元Jリーグ専務理事 木之本興三さん (65) グッドパスチャー症候群 ㊤

(C)日刊ゲンダイ

 この難病の患者は僕で国内13例目。そして12例目まで、つまり全員が5年以内に亡くなっていると言われました。死の宣告と同じです。治療は肺を摘出するか、腎臓を2つとも摘出するか。肺を取れば一生寝たきりで、腎臓を取れば週3回の人工透析。

 その時、結婚3カ月目で、家内は子供を身ごもっていました。「こんな病人と一生……」と思い、離婚を考えました。ところが、家内の母親が「今までサッカー、お酒、たばこと好きなことをやってきた。それらはできなくなるかもしれないけど、庭の四季の移ろいを見て生きる道もある。生きているだけで価値があるのだから、親子3人でがんばりなさい」と言ってくれたんです。それで僕は、腎臓を摘出することを決めました。

 ところがね、「人工透析をやっても社会復帰できる」と医者は言うけど、実際は大変でしたよ。僕の場合、一定量の血液中に含まれる赤血球の割合を示すヘマトクリット値が10%を切るようになった。正常値は40~52%なので、極度の貧血。10メートル歩くのが精いっぱいです。

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