独白 愉快な“病人”たち

歌手 丸山圭子さん (59) 卵巣嚢腫

(C)日刊ゲンダイ

 実は先日出した自著「どうぞこのまま」で初めて明かしているんですが、私は16歳の時、父をALS(筋萎縮性側索硬化症)で亡くしているんです。中枢神経が枯れていくALSは、治らないまま体が不自由になり、言葉も話せなくなり、それでも頭は侵されないという、人の尊厳とは何かを考えさせられる病気。

 年齢的に多感な時でもあり、これまでの人生の中で、父の死は一番大きな経験です。私が歌手のオーディションを受けたのも、父が死んだ後、何をやったらいいか分からず悩み、自分が全身全霊でやれることを見つけたいと思ったからでした。父を亡くした悲しみを言葉では伝え切れない。人に言っても分かってもらえない。でも、音楽を通じてなら、シンプルな表現でも相手に伝えることができるんだと思ったからなんです。そういう意味では、父の死がなければ、歌手になっていなかったかもしれません。

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