独白 愉快な“病人”たち

作家 荻野アンナさん (57) 大腸がん ㊦

(C)日刊ゲンダイ

 冷たいものが全て駄目になり、冷水を飲むと喉に銀紙が詰まるような感覚。喉越しのいいはずのプリンも、まるでセメントです。手を洗っただけでも全身にゾワッと電気が走り、冷凍庫に手を入れるなんてとてもできないほどでした。この頃、夏でもスイカをレンジで温めて食べていたんですが、味覚が戻ってから食べると、マズイ! あれは抗がん剤で感覚異常になっていたから、食べられたんですね。

 大腸がんは胃は元気なので太るんだそうです。私も、抗がん剤治療中に白血球がガクンと下がったら、なぜか食べ盛り期がやってきました。いつもはサッパリしたものが好きなのに、豚骨など脂っこいコッテリしたものが大好きになって、一時は4キロ減った体重も、元の体重から10キロ増。変な食欲は抗がん剤治療を終えると治まったものの、ボクシングで鍛えた筋肉はすっかり脂肪に変わりました。

 そもそも、なぜ大腸がんになったのか。毎年、勤務先の慶応大学で健康診断は受けているし、胃カメラの検査もやっていた。ところが、検便だけやっていなかったんです。いつも準備し忘れて、検査を飛ばしていたんです。

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