どうなる! 日本の医療

「地域包括ケア」の理想と現実

高齢になっても住み慣れた地域で暮らしたい(C)日刊ゲンダイ

 なるほど、結構な考え方だが、在宅医療・介護はかえってお金がかかる。日本社会そのものが破綻してしまうのではないか。

 高齢者以外の社会的弱者の救済も既に限界だ。社会保障費が抑制される中、日本全国で子供の貧困や生活苦を原因とする無理心中が急増している。14年に厚労省が発表した「子供の貧困率」は過去最悪の16.3%。実に子供の6人に1人が貧困に苦しんでいる。これは先進20カ国中4番目の高さだ。

 今の日本は、母子家庭より高齢者への支援が手厚い。10年の後期高齢者医療制度の総医療費は、患者負担を含めて12兆7000億円。一方で13年度の文教予算は5兆4000億円。75歳以上の高齢者の医療費に、全文教予算の2.5倍の金がつぎ込まれている。

「これでは現役世代の活力が失われ、将来が危うくなります。結果的に現役世代がやせ細り、高齢者を支えられなくなる。優先すべきは医療費の節約です」

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村吉健

村吉健

地方紙新聞社記者を経てフリーに転身。取材を通じて永田町・霞が関に厚い人脈を築く。当初は主に政治分野の取材が多かったが歴代厚労相取材などを経て、医療分野にも造詣を深める。医療では個々の病気治療法や病院取材も数多く執筆しているが、それ以上に今の現代日本の医療制度問題や医療システム内の問題点などにも鋭く切り込む。現在、夕刊紙、週刊誌、月刊誌などで活躍中。