例えば、高齢者への多剤投与だ。単に無駄であるばかりでなく危険だ。抗がん剤にしても、効果が小さい割に高価なものが少なくない。
「その多くが欧米で開発されているため、医療費の多くが米国などに流れています。その分、医療費の増加が貧困家庭を圧迫して、高齢者を支える層がさらに薄くなる。むしろ、働き手の人口を増やして収入を上げることが、将来の高齢者対策なのです」
「寝たきりでも命がある限り生命維持を図る」という日本の終末医療の考え方も、今こそ国民的議論をすべきだと小松医師は言う。
「欧州では『人間、食べられなくなったら自然に命を任せる』という考え方が定着しているため、日本ほど胃ろうをしません。結果、『寝たきり老人』はほとんどいないのです」
このままでは地域包括ケアの議論は遅々として進まないし、その中心的役割を果たすべき在宅専門医やリハビリ専門医の数を増やす工夫もない。やがて高齢者対策の議論は時間切れとなり、日本全体がうば捨て山になりかねない。
どうなる! 日本の医療