2005年4月1日の個人情報保護法の施行により、患者は法律に基づき、自身のカルテ開示を病院に求めることができるようになった。
ところが、カルテ開示の請求数は必ずしも多くない。開示義務が一定以上のカルテを保管する病院に限られている上、病院・患者とも煩雑な手続きを嫌うからだ。
そんな中、医療情報システム開発の「メディカル・データ・ビジョン」(東京)が今年6月から新たなサービスを開始し、話題になっている。診療情報(=カルテ)の一部をインターネット上で閲覧・保管できる「カルテコ」と呼ばれるサービスだ。
患者やその家族がパスワードなどを入力して、専用サイトにログインすると、医師が電子カルテに記録した傷病名、検査結果や処置、手術、投薬など診療情報や受診記録を見ることができる。受診した日はカレンダー上にオレンジ色で表示され、その日の受診内容を確認したければ、クリックするだけで閲覧できる。
「ご高齢の患者さんの中には、自分の親族や子供たちに、どんな治療や投薬を受けているかをうまく説明できない方もいらっしゃいます。そうした患者さんの周囲の人たちは、仕事や時間の関係で十二分な情報を得られず不安に思っているケースも多かったのです。ご当人の了解でパスワードを入力して電子カルテを閲覧できれば、患者さんの客観情報が得られる。半歩でも先に進むことができるようになり、とても喜ばれています」(広報・IRマネジャーの我妻みづき氏)
医師から患者にひと言メッセージも送れる上、患者が気になったことや不安なことも備忘録として記載できる。患者が精神的にも救われるケースが出てくるという。
喜んでいるのは患者だけではない。
「医療関係者の方々からは、患者さんとのコミュニケーションアップが治療にも役立つと、評価していただいています」
「カルテコ」は患者にとって、自由に自身のカルテを確認できるというメリット、病院はカルテ保管のコストと開示に伴う業務の省略というメリットがある。
現在、2病院がこのサービスを取り入れているそうだが、さらに広がりそうだ。
「将来の医療は、患者さんが自身のカルテを開示して、“こんな私を治してくれる医師を募集します”といったネットオークションが始まるといわれています。それを阻んでいるのが、遅々として進まないカルテ開示と公的医療制度の改革です。これをきっかけにカルテ開示が進み、自由診療の治療が増えてくれば、患者の医師・病院選びも大きく変わるでしょう」(医療系大学情報学部教授)
ネット情報が医療を変える時代が、すぐそこまで迫っている。
どうなる! 日本の医療