「ベッドに横たわっていた80代の老人が、いきなりウンコを投げてきて、私の衣服を汚す。記者さんは、給与をいくらもらえば、汚物にまみれたこうした老人介護の職業に就きますか」
こう語るのは、50歳を越えたばかりの細野芳三さん(仮名)である。
東京・杉並区に住む細野さんは40代半ばまで、1部上場企業に勤務する将来を約束されたエリートサラリーマンだった。
独身で、年収も1000万円を超える悠々自適の恵まれた生活。だが、ささいなことで上司と意見が衝突し、会社に辞表を叩きつけた。
退職後、しばらく失業保険と蓄えを崩して生活していたが、やっぱり働きたい。再就職活動を始め、決まったのが介護の仕事だった。
「50歳近くになって、自分が満足できるような就職先などありません。すぐにでも就職できるのは、人材不足が常態化している介護関係でした」
介護の現場