天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

拒否反応、アレルギー、貧血を抑える自己血輸血

順天堂大医学部の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 採取した血液は冷凍保存して、手術の際に解凍して使います。貯蓄した自己血は冷凍すれば半年~1年後くらいまで使うことができますが、冷凍も遠心分離もしなければ、2週間で“有効期限”が切れてしまいます。そのため、そうした設備や専門科がある施設でなければ本格的な自己血輸血は難しいのです。

 患者さんの健康状態によっても自己血輸血ができないケースがあります。基本的に、血液を採って貯蓄できる人は心臓の病気以外は健康な人に限られます。腎臓の機能が悪い人、高齢で体質的に貧血がある人、消化管に出血がある人は難しいと考えてください。

 エリスロポエチンという赤血球の産生を促進するホルモンは腎臓で作られています。腎機能が悪い人はそのホルモンが作られないため、造血剤で補いながら改善していきますが、大抵の場合は追いつきません。また、高齢と腎機能の悪化は重なることが多いので、そういう患者さんの場合は、血液製剤による輸血で手術を行います。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。