採取した血液は冷凍保存して、手術の際に解凍して使います。貯蓄した自己血は冷凍すれば半年~1年後くらいまで使うことができますが、冷凍も遠心分離もしなければ、2週間で“有効期限”が切れてしまいます。そのため、そうした設備や専門科がある施設でなければ本格的な自己血輸血は難しいのです。
患者さんの健康状態によっても自己血輸血ができないケースがあります。基本的に、血液を採って貯蓄できる人は心臓の病気以外は健康な人に限られます。腎臓の機能が悪い人、高齢で体質的に貧血がある人、消化管に出血がある人は難しいと考えてください。
エリスロポエチンという赤血球の産生を促進するホルモンは腎臓で作られています。腎機能が悪い人はそのホルモンが作られないため、造血剤で補いながら改善していきますが、大抵の場合は追いつきません。また、高齢と腎機能の悪化は重なることが多いので、そういう患者さんの場合は、血液製剤による輸血で手術を行います。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」