Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

【大橋巨泉さんのケース】5度の手術は一貫して手術か放射線

大橋巨泉さん(C)日刊ゲンダイ

 一度放射線を照射した部位には、もう一度照射することがまずできません。今回、縦隔リンパ節を切除したのは、放射線ができなかったためと思われます。これだけがんが全身に転移していると、医師によっては抗がん剤が勧められるはず。現実的には、そんな医師の方が多いかもしれませんが、大橋さんは手術を受けているのです。先月の手術から5日後には、ゲストとしてテレビ番組の収録に臨んでいます。

「週刊現代」のコラムには、「いつも1個か2個、しかも手術可能なところに転移してきた。こういう人はタマにいて、結構生きるんだそうだ。だからこの状況が続くかぎり、出てくる癌を『モグラ叩き』のようにやっつける事にしている」と書かれていますから、意識的に抗がん剤ではなく、手術を選択していることがうかがえます。

 大橋さんががんに立ち向かう姿勢は、参考になるでしょう。実は、胃や肺、大腸など臓器にできる固形がんを根治する方法は、手術か放射線の2つ。抗がん剤で治癒が望めるのは、血液のがんなどごく一部。根治を目指すなら、この2つを選択すべきで、大橋さんは見事に実践しているのです。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。