薬に頼らないこころの健康法Q&A

精神科医が実践しているメンタル管理

井原裕 独協医科大学越谷病院こころの診療科教授(C)日刊ゲンダイ

 チャンネルの切り替えはこの職業に必須のスキルですが、新人時代は困難なことでした。今は、次の患者さんに集中することができるようになりました。

 外来も4時間を過ぎたあたりから、疲労がボディーブローのように効いてきます。とにかく、患者さんは次から次へと果てしなく入れ替わります。こちらは1人です。

 週1日は、午前、午後ともに外来の日があります。この日は、昼食を取って10分程度仮眠してから午後の外来に出ることもあります。仮眠ができれば、午後の外来は順調に進みますが、これができないと苦しい時間帯がやってきます。

 一日の診察が終了し、本日の最後の患者さんを「お大事に」といって送り出したとき、一気に疲れが出ます。最終回の「あしたのジョー」のような状態です。

 気をつけていることは、この連載で書いたことと同じです。①7時間超の睡眠を確保すること。そのために「1日は17時間しかない。その17時間を密度濃く過ごす」ことを肝に銘じています。また、②アルコールは控えめに。自分が酒に強くないので、自然とこうなりました。酒を飲んだ翌朝は、まるで当直の朝のような疲労が出ます。これでは仕事にならないので、自然と控えるようになりました。

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井原裕

井原裕

東北大学医学部卒。自治医科大学大学院博士課程修了。ケンブリッジ大学大学院博士号取得。順天堂大学医学部准教授を経て、08年より現職。専門は精神療法学、精神病理学、司法精神医学など。「生活習慣病としてのうつ病」「思春期の精神科面接ライブ こころの診療室から」「うつの8割に薬は無意味」など著書多数。