千葉県の房総半島にある九十九里浜では、江戸時代の頃からイワシ漁が盛んに行われてきた。
当時は農作物の肥料として大きな需要があったため、イワシ漁は「千両万両、引きあげる」ともいわれていたそうだ。
もちろん、食材にも利用され、いくつものイワシ料理が生み出されてきた。中でも“イワシのごま漬け”は、正月などハレの日には欠かせない伝承料理として愛され、今も根強いファンがいるという。
仕事で九十九里浜に行き、お土産にイワシのごま漬けを買ってきた三上幸宏さんも、そのひとりだ。
「ほどよく酢がきいていて、イワシのうま味も伝わってきます。ごまの風味も食欲をそそりますね。しかも、イワシは健康によいと聞きますから、毎日でも食べたいほどです」
実際、イワシは「栄養素の宝庫」といっても過言ではない。
不飽和脂肪酸の一種のEPAは血小板の凝集を抑え、血液をサラサラにして血栓を防ぐ。
同じ不飽和脂肪酸のDHAは脳の神経細胞の活性化や修復をすることから、脳機能の維持・改善に役立つといわれている。
また、良質なタンパク質(アミノ酸スコア100)のほか、カルシウムやカリウムなどのミネラル分も豊富に含んでいる。
イワシのごま漬けは、新鮮なカタクチイワシが手に入れば手作りもできるが、ネット通販などで市販品を購入したほうが手っ取り早い。
味も栄養価も、千両、いや、万両の価値がありそうだ。
真似したい伝承療法