病院は本日も大騒ぎ

入院患者が恐れる魔の病室

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 こんにちは、首都圏の総合病院で看護師長を務めている看護師歴十数年のサトミです。

 私たち看護師の仲間内ではあまり話題にすることはありませんが、入院患者さんの間で「魔の病室」と恐れられている部屋があります。それは、ナースステーションのそばにある、ベッドひとつだけの個室です。

 病院では昼夜関係なく脳梗塞、心筋梗塞、クモ膜下出血など、1秒を争うような緊急手術の入院患者さんが搬送されてきます。

 集中治療室に運ばれてすぐ手術に取りかかり、手術が無事に終了しても家族の面会時間は制限されます。患者さんは約1カ月前後、ベッドに伏せたままになります。

 経過が良好と判断されて初めて患者さんは一般病棟に移され、通常の治療以外に言語障害、手足に残された後遺症などのリハビリに励むことになります。

 しかし、その逆のケースも少なくありません。

 例えば、一般病棟に入院して抗がん剤治療を受けながら手術の期日を待ち、集中治療室に移るがん患者さんなどです。

 そうしたがん患者さんも、術後は一般病棟に帰ってきます。しかし、問題はここからです。

 患者さんにもし異変が起こったときに看護師がすぐ対応できるよう、できるだけナースステーションに近い病室に入ってもらいます。

 当院には、その病室と同じフロアの一番奥に、ベッドがひとつの個室があります。一般病棟と違って、集中治療室ほどでもありませんが、血圧、心拍計などさまざまな医療機器が揃ってる部屋です。

 一般病棟の部屋からこの個室に移される患者さんを見ると、他の入院患者さんたちは「もう長くないね」とか、「あの部屋だけには、絶対に入りたくない」と、つぶやきます。

 患者さんたちは経験で知っているんですね。フロアにある一番奥の個室が、どのような部屋であるかを。