有名病院 この診療科のイチ押し治療

【不妊】独協医科大学越谷病院リプロダクションセンター(埼玉県越谷市)

獨協医科大学越谷病院の岡田リプロダクションセンター長
獨協医科大学越谷病院の岡田リプロダクションセンター長(C)日刊ゲンダイ

 日本で不妊症に悩むカップルは6組に1組といわれ、男性不妊患者も約50万人以上いると推測されている。同院はこれまで泌尿器科が男性不妊の治療に力を入れて取り組んできたが、今年7月、体外受精や顕微授精などの生殖補助医療を専門に行う同センターを開設した。泌尿器科教授を兼務する岡田弘センター長が言う。

「不妊症治療の問題点は、患者さんご夫婦、男性不妊の担当医、女性不妊の担当医の4者が一度に同じテーブルに着いて治療が進められる施設がほとんどなかったことです。その場を大学病院につくることで、不妊治療から出産、新生児の管理まで一貫して同じ病院内で診ることができるのです」

 不妊症の約半数は男性にも原因があり、本来であれば夫婦ともに同じ診療科で対応できるのが理想的だ。しかし、日本生殖医学会が認定する生殖医療専門医の中で、男性不妊を専門とする泌尿器科医は全国で50人弱しかいないため、他院ではなかなか実現できないのが現状という。

「男性不妊の原因は精索静脈瘤による酸化ストレスや前立腺炎による精路通過障害などさまざまです。精子形成が極端に少ないことによる無精子症では、体外受精をするにしても、精巣から受精可能な元気な精子を採取する必要があります。顕微鏡下の精巣精子採取術は年間約150例行っていますが、これは大学付属病院では国内最多の症例数です」

 同院の遺伝カウンセリングセンターが全面的にバックアップしているのも大きな特徴だ。近年の晩婚化の影響で、男女ともに40歳近くなって妊娠・出産を希望するカップルが増えている。特に女性が高齢になるほど、妊娠してもダウン症など胎児の先天性疾患の発生率が高くなる。同遺伝カウンセリングセンターは、その胎児の染色体異常を調べる新型出生前診断(母体から血液を採取)を専門に行う部門として機能している。

「他院の遺伝カウンセリング部門では診察日に制限があったり、専任の医師がいなかったりで、十分に患者さんの受け入れができていません。新型出生前診断は妊娠14週以前の限られた時期でなければできないので、どの施設でもパンク状態です。当院は新型出生前診断に特に力を入れていますので、希望するすべてのご夫婦のカウンセリング、診断に対応できる体制にしています」

 総合病院という利点も大きい。糖尿病や脊髄損傷など持病が不妊症と関係している場合、他科との連携ができるからだ。特に若年層の発症が増えている糖尿病では神経障害から射精障害を引き起こす。射精できなければ、精巣から精子を採取することになるという。

「がん患者さんの場合でも、明日から抗がん剤を投与することになれば、その日のうちに精子を凍結保存しておくことも可能です」

 同センターが本格的に生殖補助医療を開始したのは今年8月からだが、すでに妊娠している人もいる。

 目指すのは「不妊のすべての治療に対応できる施設として、年間新患1万人」という。

■ 独協医科大学(栃木県)の付属病院のひとつ。

◆スタッフ数=泌尿器科医6人(うち生殖医療専門医1人)、産婦人科医1人、胚培養士3人
◆センター開設(2015年7月)前までの男性不妊初診患者数=年間約1500人